トルクレンチの基本的な使い方|選び方や各部名称・注意点等

トルクレンチ

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車の整備に慣れてくると、エンジン周りや足周りの整備も自分でできるようになってきます。

その際に必要になってくる工具の一つに「トルクレンチ」があります。

簡単に説明すると、ボルトやナットを指定された力で締め付けるための工具です。

機械の整備経験がない方は聞き慣れない工具かもしれませんが、バイクや自動車の整備には必須の定番工具です。

今回は初めてトルクレンチを手にする方に向けて、基礎的な知識や使い方などをわかりやすく解説します。

記事の最後の方にJB23ジムニーの各部の規定トルクを載せておいたので今後の整備にぜひお役立てください。

目次

トルクレンチ(Torque Wrench)とは

ボルトやナットには設計上決められた締め付け力で締めなければならないボルトやナットがあります。
それらを適正トルクで締付けるための工具、それがトルクレンチです

すでに締め付けられているボルトやナットの締め付けトルクを調べる工具でありません。

締め付け力(トルク)の単位はN・m(ニュートンメートル)で表します。

トルクレンチにも様々な種類がありますが、締付けトルクの確認方法で分類すると「直読式」と「シグナル式」に分けられます。

トルクレンチの種類

トルクレンチは大きく分けると、プリセット式、デジタル式、直読式の3種類があり、それぞれ特色が異なります。

プリセット式が最も多く普及しているため種類も多く比較的安価です。

プリセット式

プリセット式は、本体グリップ部分を回転させてあらかじめ締め付けトルクを設定してつかいます。ボルトやナットがセットした締め付けトルクに到達すると、「カチッ」というクリック音とともに、手への軽い衝撃とヘッドの角度変化で作業者に伝えます。

デジタル式

プリセット型と同じ用に事前に締め付けトルクをセットしますが、プリセット式のようなダイヤルではなく、本体の液晶画面で数値をセットします。セットした締め付けトルクに到達すると「ピー」という電子音で作業者に伝えます。
プリセット型よりも高精度の締め付けが可能で、数値を記録する機能や予告機能など様々な機能が付加されたものもあります。

直読式

直読式のトルクレンチは針と目盛りで締め付けトルクを表示します。
規定トルクに到達しても作業者に伝える機構がないため目盛りを目視して確認します。
目盛りは正面から見ないと正しい数値が読み取れないため、正面から目盛りを目視できない箇所では使えません。

 

トルクレンチの各部名称

角ドライブ
ソケットの差し込み口です。レンチの大きさによってサイズが異なります。

小さいサイズから、1/4インチ(6.3mm)、3/8インチ(9.5mm)、1/2インチ(12.7mm)などがあります。
尚、写真は3/8インチ(9.5mm)です。

ラチェット切り替えレバー
レバーを切り替えると角ドライブの回転方向が変わります。
この機能は右ねじ左ねじへ対応させる際のもので、緩めるための機能ではありません。

グリップ
締め付けの際にここを握ります。グリップの中央付近に線がありますが、力を込める指がこの線になるように握って締めます。
例えば中指に力を込めて締めるなら、中指をこのラインの位置になるようにグリップを握ります。

トルク目盛り
メモリには主目盛り副目盛りの2種類があります。トルクのセットは主目盛り+副目盛りで設定します。
たとえは47.0Nのトルクをプリセットしたい場合、主目盛りで45に合わせ、次に副目盛りで2に合わせて47N・mをセットします。

ロックつまみ
このつまみを回してトルク目盛の固定、解除を行います。

トルクレンチの選び方

トルクレンチには測定できる範囲があり、下限値上限値が存在します。

5〜25Nmくらいの小さなトルク向けから50〜210Nmのように大きな力を測定できるものなど測定できる範囲に幅があります。
測定範囲は作業の内容で選びますが、複数のトルクレンチを所有する際は測定範囲がなるべくかぶらないように選ぶと経済的です。

たとえば、20〜200Nmのトルクレンチを持っているなら、30〜100Nmのトルクレンチは不要ですよね。
また、20〜50Nmと30〜60Nmのトルクレンチを所有すると、測定範囲が重複しすぎていてあまり経済的とは言えません。

あくまで一例としてですが、測定トルクの範囲が5〜30Nmと20〜200Nmのような組み合わせで所有すれば一通りの範囲はカバーできると思います。

自動車に使用する場合は200Nmを超える箇所もあるため、作業予定のある方は上限値に注意してください。

プリセット型の場合、上限値や下限値に近いトルクの場合は精度が若干悪くなります。

特に上限値ギリギリのトルクで締める場合は破損のリスクが高まるため測定値に余裕を持たせて使うことも大事です。

プリセット式トルクレンチの使い方

一般的なプリセット式トルクレンチの場合で使い方を説明します。

step
1
ロックの解除

ロックツマミを解除側にまわしてロックを解除します。

step
2
トルクの設定


主目盛りと副メモリの合計値が設定トルクになります。

40Nmを設定する場合

本体の主目盛りの40と刻印された横ラインに、グリップの0の刻印が合うように回します。

42Nmを設定する場合

本体の主目盛りの40と刻印された横ラインにグリップの0の刻印が合うように回します。
次に、副目盛りが2の刻印に合わせます。40+2Nmで42Nmが設定できました。

step
3
グリップのロック


ロックツマミをロック側にまわしてグリップをロックをします。

step
4
ソケットを取り付ける


使用するボルト・ナットのサイズに合ったソケットをドライブ角に取り付けます。

step
5
回転方向レバーをセットする


回転方向切替レバーを使用する方向にセットします。

step
6
設定したトルクまで締め付ける


「カチッ」という音と、手への軽いショックが発生するまで締め付けます。
念の為もう一度締めたくなるかもしれませんが二度締めは厳禁です。締まった状態のボルトやナットに使用するとトルクレンチの誤差が大きくなり、指定トルクの許容誤差を超えた力で締めてしまう可能性があるためです。

一つの部品を複数のボルトで締める場合
ボルトが複数ある場合は一気に指定トルクで締め込まず段階的に締め上げていくのが理想です。
例えばボルト6本で取り付ける場合、指定トルクが50Nmだとしたら、一旦30Nm程度のトルクで6本のボルトを締めてから、指定トルクの50Nmで更に締めます。
そうすることで局所的な締め付けによる取付の歪みを防ぐ事ができます。

トルクレンチを扱う際の注意点

トルクレンチは精密機械です。

間違った使い方をすると精度が落ちたり、破損し正しいトルクで締めることができなくなります。

緩める作業には使用しない

トルクレンチは、指定トルクでボルトやナットを締め付けるための工具です。
緩める作業に使ってしまうと正しいトルクを測定できなくなる可能性があります。

そして、かならずグリップ部分を握って使用する事が大事です。
トルクレンチは指定箇所以外のところを掴んで締めつけを行うと、設定トルク値にはなりません。必ず指定箇所を握って締め付け作業を行ってください。

二度締めは行わない

指定トルクに到達し、カチッと音がなったら反応した後に何度も繰り返すのはやめましょう。繰り返すほど必要以上の力が加わり、設定値を超える恐れがあります。

強い衝撃を与えない

トルクレンチは精密機械です。落としたり、乱暴な扱いで強い衝撃を与えると測定精度に悪影響を与えてしまったり、破損させてしまいます。
車載の際も走行中の振動が伝わらないように気をつけましょう。

保管の際はメモリを最小値に

トルクレンチを保管する際は、設定トルクを最小値に戻してください。内部のバネに狂いが生じ、正しい測定ができなくなる可能性があります。

まとめ

ジムニーに限らず、エンジンや足回りを整備する際には必ず必要になるのがトルクレンチです。
持っていれば自分で整備する幅が広がります。トルクレンチを使って正確なトルクで締め付ければ、緩過ぎや締めすぎによるトラブルを回避できます。
これまで感覚で締めていたという方も、これを期にトルクレンチを導入してみてはいかがでしょうか。

 

ジムニーJB23の締め付けトルク一覧

サービスマニュアルの記載を元にジムニーの締め付けトルクを一覧にしました。

トルクレンチを使った整備の際にお役立てください。

エンジン系

ドレンボルト 44N・m(449kgf・cm)
オイルフィルター 14N・m(143kgf・cm)
スパークプラグ 20N・m(200kgf・cm)
エンジンヘッドカバーボルト 11N・m(112kgf・cm)
アイドラープーリーボルト 50N・m(510kgf・cm)
A/Cコンプレッサーアジャストボルト 23N・m(230kgf・cm)
A/Cコンプレッサーピボットボルト 23N・m(230kgf・cm)

足回り系

ホイールナット 95N・m(970kgf・cm)
キャリパキャリア取付ボルト 83N・m{850kgf・cm}
キャリパピンボルト 22N・m{220kgf・cm}
フロントスタビライザーバー取付ナット 20N・m{200kgf・cm}
ステアリングドラッグロッド・タイロッド
ロックナット 65N・m{660kgf・cm}
ロッドエンド 40N・m{410kgf・cm}
※ドラッグロッド、タイロッド共に同締付トルク
スタビライザーリンク上部ナット 50N・m{510kgf・cm}
スタビライザーリンク下部ナット 29N・m{300kgf・cm}

フロントラテラルロッド取付ボルト 90N・m{920kgf・cm}
※左右共に同締付トルク
リヤラテラルロッド取付ボルト 90N・m{920kgf・cm}
※左右共に同締付トルク
フロントショック上部ナット 29N・m{300kgf・cm}
フロントショック下部ボルト 85N・m{870kgf・cm}
リヤショック取付ボルト 85N・m{870kgf・cm}
※上下共に同締付トルク

駆動系

ATオイルパンドレンプラグ 22N・m(225kgf・cm)
トランスファレベルプラグ 23N・m(230kgf・cm)
トランスファドレンプラグ 23N・m(230kgf・cm)
フロントデフレベルプラグ 50N・m{510kgf・cm}
フロントデフドレンプラグ 27N・m{280kgf・cm}
リヤデフレベルプラグ 50N・m{510kgf・cm}
リヤデフドレンプラグ 27N・m{280kgf・cm}

※ジムニーサービスマニュアルより

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